日本ではあまり馴染みの少ないベビーシッターのアルバイトですが、欧米諸国ではとても一般的です。
私がイギリスのエディンバラに住んでいた時、知り合いから日本人の女性が娘さんのシッターを探しているという話を聞いて、さっそく連絡を取ってみました。
私は保育士などの資格は持っていませんが、子供が大好きで日本で託児所で働いていたこともありました。
娘さんのこと
シッターを探していた日本人女性の春香さんとの面接は小さなカフェで行われ、その時にシッターをする10歳になる娘さんについて詳しくお話して頂きました。
内容は、娘さんは自閉症で日本でいう養護学校にあたる学校に通っていること、言葉は理解できても話す事は出来ないこと、お手洗いには少し手伝いが必要なことなどです。
私は過去に一度も自閉症の子供に接した事はありませんでしたが、子供好きという事と春香さんの人柄とで全く不安は感じませんでした。
そして、毎週土曜日にベビーシッターをする事になりました。
ベビーシッターのお仕事
お仕事は14時〜20時まででその間に、近所のカフェに出かけたり、電車で外出し、家に帰ってからは夕食を食べ、お風呂に入るというルーティーンでした。
娘さんのローラちゃんはとても人懐っこく愛嬌があり、通う度に2人の距離がどんどん縮んでいくのが嬉しかったです。
私はシッターをする土曜日が毎週とても楽しみになり、通っていた語学学校では、ローラちゃんの話ばかりをして、先生に「孫の話ばかりするおばあちゃんみたい」と言われるほどでした。笑
ローラちゃんとはほとんどの日を楽しく笑って過ごしましたが、少し大変な日もありました。
ある時は、お出かけを嫌がり、駅のホームで靴を放り投げてしまったのです。私は慌てて飛んでいった靴を拾い、ちょうど到着した電車に裸足の彼女を乗せました。電車に乗ったローラちゃんは、そこで諦めが付いたのか落ち着きを取り戻し靴もちゃんと履いてくれました。
こんなドタバタ劇も彼女の成長の一過程であり、今となっては2人の楽しい思い出です。
母:春香さんの言葉
ローラのような子がいることをたくさんの人に知ってもらいたい。私達夫婦は、イギリスで多くの日本人シッターさんに助けられて今までの人生を生きてきました。
近所のイギリス人のおばさまは、シッターさんたちが楽しそうにローラとお出かけしておる様子を毎週末窓から見て感動していました。
イギリス人も以前はそうやって助け合っていたけれど今は少なくなった、そして外国でもお互い助け合うのはきっと日本人の文化からくる人柄なのねとも言っていました。
ベビーシッターをしてみて
シッターの仕事には子供の安全と成長を助けるという重要な責任が伴いますが、その分、子供の笑顔と成長は最高の報酬です。保育園や幼稚園のように大勢と向かい合うのではなく、1対1で子供と向き合うので母親を疑似体験させてもらっているような感覚でした。
日本で馴染みの薄い仕事で、さらに障害のある子供のシッターとなると不安に思う人もいるかもしれませんが、もし機会があり、子供好きであればぜひ立候補してください。春香さんのように海外に住むお母さんたちの中には助けを必要としている方もいらっしゃいます。
また、この仕事は女性だけの仕事ではありません。実際に、ローラちゃんには男性のシッターさんもいました。
イギリスに行っていなければ、きっとすることはなかったベビーシッター。そのおかげでローラちゃんとローラちゃんの家族に出会え、素敵な経験をさせていただいたことにとても感謝しています。
執筆者 : Quiteña(ペンネーム)
自己紹介 : 好奇心旺盛で三日坊主。旅行、読書、田舎、自然、外国語、日本の古き良きもの等好きなものがいっぱい。