イギリスは、とても『物を大切にする国』だと思います。イギリス留学時代に感じたイギリス文化を紹介します。
マーケット
イギリスでは週末になると、街のあちこちでマーケットが開かれます。マーケットでは、本当に様々な物を見つける事ができます。そしてそのほとんどが、使い古された服だったり、食器だったり、家具だったり。それがきちんと手入れをされて(例外もありますが・・・)大事そうに並べられています。
そして実際に家庭でも、マーケットで手に入れた物がよく使われています。木製の家具などは、その独特の風合いと艶が、使い込まれた長い年月を感じさせます。そして、要らなくなった物は再びマーケットで売りに出されます。よほどの事がないかぎり、捨てるという行為には至らない気がします。
カップのデザート
そして、食事に関しても『物を大切にする心』を感じる事が多くありました。お皿に残ったソースもパンにつけて残さず食べる、という事は、もう日本でもあたりまえになってきていますが、私が最初にちょっと戸惑ったのは“カップのデザートの食べ方”です。
私の滞在先での学校では、昼食時に多くのスタッフがカップのデザートを食べていました。そして皆、デザートを食べ終わると、まずスプーンでゆっくりとカップの内側のヨーグルトをかき集めます。それが次第に、カッカッカッカッ、とリズミカルに、且つものすごい速さになっていきます。そして、それがしばらく続きます。もうそこまでしなくても・・・と思うくらい、カッカッカッカッ、カッカッカッカッ、と勢いよくかき集め続けるのです。
正直、最初はちょっとこれは御行儀がよくないなぁ、と思っていました。でも、イギリスで暮らしているうちにだんだんと、これが『物を大切にする心』なんだと気が付きました。
子供から大人まで
そして、そんな『物を大切にする心』は、イギリスでは幼少時の頃から身につけられています。
ある時、鼻水をたらした子供がいました。そしてその子はティッシュで鼻水を拭くと、そのティッシュをきれいにたたみ、なんと、着ている服の袖口にサッとしまったのです。私は咄嗟に、汚い!捨てなくちゃ!と思いました。でも、まわりを見ると、どの子も袖口にティッシュをしまっているのです。
ティッシュは、鼻水を一度拭いただけでは捨てないのです。確かに、一度拭いただけでは、使われていないティッシュの面も大いにあります。そうしてイギリスでは、小さな頃から『物を大切にする心』が養われているのです。気が付くと、大人も皆そうでした。ティッシュは一枚を何度でも使っていました。
帰国してからも・・・
幸せなことに、日本には物がたくさんあって、溢れています。でも、それはイギリスでも同じ事です。今はネットを通じて、どこにいてもどんな物でも手に入れられる時代です。ただ、日本とイギリスとでは、物の消費のスピードが少し違うと思います。
だから私もイギリスで暮らしてからは、物に対する気持ちがだいぶ変わりました。それは良かったなぁ、と今でも思っています。
ただし・・・。
そんな数々の『物を大切にする心』をイギリスで身に付けた私ですが、その習慣にすっかり慣れてしまった帰国直後・・・。無意識にスプーンで音を立ててプリンをかき集めて、友達にドン引きされました・・・。
なので、それからカップのデザートは音を立てずに、静かにゆっくりとかき集めています。
執筆者:ぴろきちこ(ペンネーム)
かつて旅した国を語りたいお年頃。