フィリピンに海外移住してすぐに直面するのが食の問題。やっぱりお国変われば食も変わると申しますか、最初のうちはその味に馴染めないようです。私はフィリピンに来てすぐに食堂を営みましたが、醤油やお酢などの微妙な味の違いに苦しんだ覚えがあります。
今回は、私がフィリピンに移住して発見した日本とフィリピンの食文化の違いについてお話したいと思います。また、フィリピンで手に入りにくい日本の食材についても合わせてご紹介します。
日本とフィリピンの食文化の違い
フィリピンに来て現地と人と一緒に生活を続けていると、日本人とフィリピン人の味覚の違いや食文化の違いにとまどったり驚いたりの連続です。ここではそんなお話をすることにしましょう。
生ものは食べない
たとえば、フィリピンのレストランでお肉料理を頼んだとしましょう。日本ならハンバーグやステーキの横にキャベツの千切りやパセリなどの生野菜がついてきますが、フィリピンではそもそも野菜を生で食べる習慣がないので、お肉とソースを入れたちいさな器が乗ってくるだけで、少し寂しい気がします。
もちろん魚を生で食べる習慣もありません。ですから日本人のように、まだぴくぴく動いているさばいたばかりの魚を食べるなんてもってのほかなのです。
麺類とごはんは一緒に食べない
私が食堂をしていて日本とフィリピンの食文化の違いに驚いたのは、フィリピン人は麺類とご飯を一緒に食べないということです。私が食堂を始めた当時、ソース焼きそばを朝メニューに出していたことがありますが、彼らが焼きそばと一緒に注文してくれるのは、ご飯ではなくてパンやクラッカー。
つまり、彼らにとって焼そばはご飯と一緒に食べるイメージではないので、お昼や夜の食事のおかずとしては成立しません。ですから、ラーメンライスもありえない組み合わせ。フィリピン人にとっては焼そばやスパゲッティ、ラーメンなどの麺料理はおかずではなく、おやつなのです。
食事をする時はスプーンとフォークを使う
日本人は右利きの人は右にお箸を持って空いた左手でお茶碗を持ちますが、フィリピンでの食事は右手にスプーン、左手にフォークが一般的です。最初とまどいますよ。スプーンとフォークを使っておかずを口に運び、スプーンでごはんをすくって食べるわけですから、最初のうちはごぼしてばかりです。
フィリピンの家庭料理は煮込み料理が多い
魚は焼いて食べることも多いですが、肉や野菜は焼くというよりは煮込むことが多いです。料理は中国料理の影響を受けたものが多く、パンチットと呼ばれる中華風に味付けされた焼そばやチャプスイと呼ばれる八宝菜、ルンピアという名前の春巻きなどですが、料理の出し方も中国料理のように大きな皿に盛られたおかずを小皿に取り合って食べるスタイルです。
フィリピンの家庭料理に煮込み料理が多い理由を私なりに考えたことがありますが、ひとつは保存がきくという点、もうひとつは料理を作る時に火加減がしにくいからじゃないかと思います。
フィリピンの家庭ではまだ炭で料理するところも多く、焼き物のように強火や弱火などの火加減が必要な料理より、火力の調整がいらない煮込み料理が作りやすかったのではないかと思うのです。
フィリピンは首都マニラでさえ都市ガスが整備されておらず、プロパンガスを使うのが普通ですが、いまだに炭を使っている家もたくさんあります。
フィリピンで手に入りにくい食材について
フィリピンへの海外移住ばかりではなく、外国に住んだら日本の料理を食べたくなるのは人情というものですが、なかなか手に入りにくい食材もたくさんありますのでいくつかご紹介しておきましょう。
かつお節、昆布、椎茸などのダシに使う食材
現地の人が買い物に訪れるスーパーマーケットにはまずありません。あるとすれば、外国人も行くいくようなショッピングモールか日本商品のインポートショップです。いずれにしろ安定供給ではありません。
ふりかけ、焼き海苔
これも普通のスーパーには置いてありません。そもそもフィリピンにはふりかけという食文化がないので、フィリピン製のふりかけもありません。
味噌、みりん
マニラの大きなショッピングモールに置いてありますが、韓国製のこともあります。地方ではまず手に入らないでしょう。
日本酒
デパートワインコーナーで探したことがありますが、私が住むナガ市にはありません。マニラのデパートでも見かけたことがないので難しいと思いますが、マニラのマカティにあるリトル東京にはあるかも知れません。(私は行ったことがありません)
こんな状況なので、おでんを作りたくてもダシがないし、そもそも、しらたきや厚揚げもないのでおでんになりません。味噌汁は日本製のインスタントの味噌汁がおおきなスーパーに置いてある時もあります。いずれにしろ、だし、みりん、酒が手に入りにくいので、フィリピンに移住される際は日本から送ってもらうルートを開拓しておくほうがいいと思います。
執筆者:ながとし(ペンネーム)
プロフィール:フィリピンのナガ市という地方都市の大学の近くで妻と二人で雑貨店と食堂を営んでいます。食堂のメニューは地元の学生に人気のカレーライスに親子どんぶり、焼肉定職と日本のB級グルメが中心。いつか彼らが日本に行った時、「あ、これ食べたことある!」と言ってくれるのが夢です。